平成15年改正審判制度について


2003年9月2日

 ※施行日:平成16年(2004年)1月1日

      
図1.改正審判制度


〔ポイント〕

 1.異議申立制度の廃止と無効審判制度への統合

 2.無効審判における攻撃・防御の機会の適正化

 3.無効審判と審決取消訴訟間の「キャッチボール現象」の適正化

 4.当事者系審判の審決取消訴訟における求意見・意見陳述制度

 5.特許付与後の情報提供制度

 

1.異議申立制度の廃止と無効審判制度への統合(特許・旧実案)

 平成16年1月1日より異議申立制度廃止

 ⇒施行日に公報発行後6月を経過してない場合でもその後は異議申立不可

〔新無効審判制度〕

 ・請求理由…公益的理由&権利帰属に係る理由 (従来通り)

 ・請求人適格…公益的理由は何人も、権利帰属に係る理由は利害関係人

        (特許・旧実案・意匠)

 ・請求時期…特許付与後いつでも (従来通り)

 ・審理方式…口頭審理 (従来通り)

 

2.無効審判における攻撃・防御の機会の適正化

2−1.無効審判請求書の請求理由の記載要件の明確化

 無効審判請求書では「特許を無効にする根拠となる事実」を「具体的」に「特定」し、かつ、「その事実と証拠との関
係」を記載しなければならない。

 @特許を無効にする根拠となる事実…無効理由の根拠となる法条の要件を構成する具体的事実(主要事実)

 A具体的に特定…例えば新規性欠如を根拠とする場合には、文献名のみでなく、発明の内容のほか、いつ、どこ
で、どの刊行物のどの頁に記載されているのか、等。
⇒証拠たる先行技術文献を精査しなくても、請求の理由の記載で、特許を無効にする根拠となる事実が把握できる
程度に具体的に主要事実を特定

 Bその事実)と証拠との関係…要証事実のそれぞれと証拠のそれぞれがどのように対応しているかを記載

 

2−2.審判請求時に記載の請求理由の要旨変更についての例外的許可

    (特許・旧実案/新実案・意匠(訂正請求に関する規定は適用除外))

 無効理由の追加を真に認めるべき事案についてのみ例外的に審判請求書の請求理由の要旨変更となる補正を認
める。

 〔条件〕…@&(AorB)を満たす場合

 @その請求理由の補正によって審理が不当に遅延するおそれがないこと

 A特許権者による訂正請求がなされ、その訂正請求に起因した新たな無効理由等の主張をするために請求理由
の補正が必要となったこと

 B審判請求時の請求理由にその無効理由等を記載できなかったことに合理的な理由があり、かつ、被請求人(特
許出願人)がその請求理由の補正に同意すること

 

 2−3.特許権者の防御について

 ・前記2−2.の要旨変更の補正が認められる場合には、特許権者に対して再度の答弁機会&再度の訂正請求
機会が与えられる。

 ・審決取消訴訟において訂正審判の請求をすることにより特許庁に差し戻された無効審判事件については、再係
属の無効審判の審理にあたり、訂正請求の機会が与えられる(下記3.を参照)。

  ⇒訴訟でした訂正審判請求を無効審判の手続中に訂正請求として吸収

  (同一の訂正内容を援用or異なる内容で訂正可能)

 ・複数回の訂正請求がされた場合には、先の訂正請求は取り下げたものとみなされる(直近の訂正請求のみが審
理対象)。

 ・審決取消訴訟において特許維持決定の取消判決がなされ、特許庁に無効審判が再係属した場合に、審判長に
対して訂正請求のための期間を指定することを求める申立てができる。

  ⇒当該申立てが認められれば指定期間内に訂正請求が可能(指定するかは審判長の裁量)

 

 2−4.審判請求人の攻撃機会

 ・「審判請求書の補正」のほか、「弁駁書」の提出が可能(従来から実務上は利用されていたが今回施行規則に明
確化)。

  ※弁駁書も審判請求書の補正書と同様に取り扱われる。

  ⇒原則:要旨変更となる補正不可、例外:前記2−2.の例外的許可あり

 ・特許権者から訂正請求がされた場合、審判請求人が訂正の不適法性について主張することが可能。

 〔主張内容の例〕

  @訂正要件違反

  その訂正は訂正要件違反であり認められない→そのため審判請求当初に申し立てた無効理由は解消されてい
ない

  A訂正後の発明が無効理由を有する

  ・訂正は適法であるが、審判請求当初に申し立てた無効理由は依然として解消していない

  ・訂正は適法であるが、当該訂正後の発明が新たな無効理由を有する(これは審判請求書の要旨変更になるた
め、2−2.の例外的許可が審判長に認められる場合のみ有効)

 

3.無効審判と審決取消訴訟間の「キャッチボール現象」の適正化

  (特許・旧実案)

 キャッチボール現象…審決取消訴訟中に訂正審判の請求がされて訂正審決が確定することにより、裁判実務上自
動的に無効審判の審決が取り消されて無効審判事件が特許庁に再係属すること。

 ・審決取消訴訟提起後における訂正審判請求可能時期を制限

  原則:訂正審判請求不可

  例外:出訴後90日に限り訂正審判請求可

 ・出訴後に訂正審判請求されたものについては、裁判所が実体審理を行うことなく審決を取り消す決定をして無効
審判事件を特許庁に差し戻すことができる(裁量規定)

 ・差し戻された無効審判において、訴訟においてした訂正審判請求を無効審判の手続中に訂正請求として吸収さ
せる

  ⇒審判長から訂正請求の期間が指定

  @同一内容の訂正請求の場合→差し戻しの原因となった訂正審判の訂正明細書等を援用(訂正請求書につい
ては新たに作成して提出)

  A異なる内容の訂正請求の場合→先の訂正審判の請求はみなし取下げ、新たな訂正明細書等を対象とする

  B指定期間内に訂正請求をしなかった場合→出訴後90日以内に請求した訂正審判が、当該指定期間の末日
に訂正請求として請求されたものとして取り扱われる(訂正審判の請求書に記載した請求の趣旨・請求の理由も同
一であるとして取り扱われる)



4.当事者系審判の審決取消訴訟における求意見・意見陳述制度

 (特許・旧実案・新実案・意匠・商標)

 特許庁の法令解釈や運用基準が審決取消訴訟における主要な争点になっている場合などに、当該訴訟において
特許庁が専門的意見を述べる。

 ・求意見…裁判所が特許庁に意見を求めること

 ・意見陳述…特許庁からの申立により裁判所が許可を与えて特許庁が裁判所に意見を述べること



5.特許付与後の情報提供制度

 (特許・旧実案)

 ・特許の設定登録後はいつでも情報提供可能

 ・何人も情報提供可能

 ・提供する情報の種類…特定の無効理由

  ex)新規性・進歩性・拡大先願・新規事項追加の補正・不適法訂正等

 (公序良俗違反、条約違反、冒人出願、後発的無効理由等は除く)

 ・提出対象…書類(刊行物、明細書、カタログ、実験成績証明書)


 
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